インドネシア「東ジャワをゆく」④

【ポノロゴ知事 トランス・ジャワへの夢】 

  ポノロゴ県カウマン区第2中学の生徒のみなさんによるレオッグ(Reog)の演技を、みせていただいた前日、われわれがポノロゴに入ったのは夜遅くでしたが、同県のイポン・ムクリソニ(Ipong Muchlissoni)知事(51)と夫人のスリ・ワフユニさんが、公邸で出迎えてくれました。
 インドネシアの人たちは、小柄な人が多いのですが、イポン知事は180㌢を超えるだろう偉丈夫です。

知事公邸の控えの間

照れた表情で夫人とともにわれわれを迎えてくれたイポン知事

 知事は、今年5月に広島市で開かれた「ひろしまフラワーフェスティバル」にレオッグの舞踊団を率い、パレードに参加したといいます。
 スマートフォンにおさめたその時の動画を、見せてくれました。身を揺する巨大な仮面に、アスファルトの上でも軽々とトンボを切る踊り手。
「どうだい」と、知事はとても自慢げです。やはり、レオッグ・ポノロゴは郷土の誇りです。
 3日間にわたって開かれるお祭りには、インドネシアの国中から数十万人が見物に集まる、極めて貴重な観光資源です。ポノロゴ県の人口は約100万人で、その70%が農業人口です。「経済発展のためには、観光ビジネスをもっと盛んにしなければならない。国内の観光客はまずまずなんだが、外国人が少ない。とくに日本人にもっと来てほしい」と、知事は言います。

レオッグをモチーフにした絵画を説明する知事

知事の執務室

 しかし、大きな問題はアクセスです。
 「ポノロゴには、高速道路もない、鉄道もない、空港も港もないんだ」と、知事は嘆きます。
 東ジャワの州都スラバヤから車で約5時間、最寄りの中部ジャワのソロからでも3時間かかります。
 日本からだとさらに不便です。スラバヤへもソロへも空路の直行便はなく、ジャカルタかバリで国内線に乗り換えなければなりません。それから陸路ですから、日本人観光客が強いて足を向ける場所ではありません。

 「この状況がもうすぐ変わるんだ。ソロから1時間、スラバヤからでも2時間でポノロゴに着くようになる」と、知事の声が大きくなります。
 知事が大きな期待をかけるのは、ジャワ島横断高速道路(トランス・ジャワ)の開通です。ジャワ島の西端の街・メラックから、首都ジャカルタ、中部ジャワ北海岸のスマラン、内陸のソロを経てスラバヤを結び、東端のパスルアンまでの総延長約1000キロに及ぶハイウエイです。
 インドネシアは高速道路の整備が遅れており、トランス・ジャワは政府の最優先プロジェクトとして、工事が進められています。ただ、着工して十数年が経ちますが、全通の時期はたびたび延期されています。地元紙によると、ジョコウィ大統領は「中国はすでに6万キロもの高速道路を持っているのに、インドネシアは独立から70年でようやく840キロにすぎない。私たちは遅すぎる」と、2018年中の完工を必達として、厳しく発破をかけているそうです。

完成したばかりの真新しい料金所

 とくに、東ジャワで未整備区間が多いようで、われわれの車での移動も高速道路で快適に走行したかと思うと、すぐに未舗装の一般道路に入り、でこぼこ道を土埃にまみれながら走る、という繰り返しでした。
 高速道路は大規模な架橋がつながっていないところも目立ち、労働者不足に悩まされることはないこの国とはいえ、あと2か月ほどで工事が終わるとは思えません。

工事中の区間が目立つ

高架のような大きな構造物もまだ未完成

 ともあれ、トランス・ジャワの全通はそれほど遠い先ではないでしょう。
 「今考えているのは、世界の仮面が集まるお祭りの開催だ。日本をはじめ、世界中から観光客がくるに違いない」と、ポノロゴの知事が夢を膨らませるのは当然です。

 堂々とした体躯のイポン知事の本業は不動産業だそうです。そして、傍には美人の奥様。われわれとの記念撮影では、親指を立てる決めのポーズです。
 某大統領を否応なく連想してしまいます。
 しかし、強引なディールなどなく、郷土発展への道を率直に語ってくれる人でした。

記念撮影での決めのポーズ

 次は、スラバヤ「マングローブの森の奇跡」です。