事務局発45号

昨年9月、政府は文化庁の京都移転と、消費者庁と総務省統計局の一部の新拠点を徳島県と和歌山県にそれぞれ置くという中央省庁の移転方針を決定しました。その一方で、中央省庁の重要組織が関西から東京に「逆移転」してしまう事実を知る人は、ほとんどいないのではないでしょうか。法務省の法務総合研究所国際協力部ですアジアを中心とした海外諸国の法律整備を支援するためのセンターとして、2001年に大阪中之島合同庁舎(大阪市福島区)に開設されました。検事、裁判官出身者らが教官として所属し、100人規模の国際会議室も備えています。民法、商法などの法律が未整備なアジア諸国を中心に、アフリカ、南米などの国々も含め、これまでに約30か国から、2000人を超える人々を受け入れ、研修を行い、国を担う法律家を育ててきましたその中から、各国で司法大臣や次官、最高裁判事などを務める人材も出ています。日本は明治維新で不平等条約を解消するため、外国法を苦労して学び、短期間で法体系をつくり上げました。その日本ならではの国際貢献です国際協力部は今年10月、東京都昭島市に移転します。法整備支援事業は新しいセンターで拡充される見込みですが、関西からはその機能が去る計画です。現国際協力部長で大阪出身でもある阪井光平さんは「なんらかの形を関西に残したい」としていますが、完全な移転後は厳しいと思われます◆わたしたち報道機関は同部が中之島に開設された当初は、カンボジアの民法草案の完成や、ベトナムの民事訴訟法の施行などの成果を多く取り上げましたが、ここ数年はそうした記事は見ません。また、今回の「東京移転」に関する報道もほとんどないように思います◆今更ながらですが、移転期日までまだ少しの時間はあります。日本が誇る政府組織のレガシーが関西に残る後押しができないか。会員の皆様からも知恵をいただければと思います。
(田中 伸明)