事務局発46号

◆文化庁の京都移転は、明治維新以来初の中央省庁の本格移転となる。4月に先遣組織の地域文化創生本部が京都市内に設けられた。8月中には、具体的な移転規模、期日、場所などが明らかにされる。準備が進む中で、関西が長年待ち望んでいたはずの首都機能移転にもかかわらず、京都以外での関心が非常に低い関西広域連合の発足などで、それぞれ個性的だった関西の自治体・経済界は結束を強化しつつあったが、「文化庁の京都移転」への対応を見る限り、「関西はひとつひとつ」のベクトルに逆戻りしそうな印象だ◆4月初めに、京都市内のホテルで開かれた地域文化創生本部の発足式は、さながら京都選出の衆参国会議員や府市議会幹部のお披露目の場の様相で、民間も京都財界が占めた。文化庁を京都で受け入れるという意気込みはわかるが、それが過ぎると文化庁は京都だけのものになってしまう◆逆に、大阪の府市、経済界は2025年の万博誘致にシフトし、明治維新以来の首都機能移転、それも関西に移るという事実を評価し、活用しようという動きは皆無。神戸も同様。知人の経営者に聞くと、今は「開港150年」、京都に文化庁など全く関心外だ文化庁というと、文化財保護ばかりに目が行くが、文化財の活用、著作権の管理など所管には、観光や知的財産ビジネスに結びつく分野もある。このまま「囲い込み」と「無関心」が続けば、関西は維新以来の好機を逃し、中小企業庁や観光庁の移転などさらなる首都機能移転にも、とうていつながらない◆だが、ほっとする動きも出てきた。文化庁移転を側面で支える京都市の文化庁移転推進室が今秋、大阪市内でシンポジウムの開催を計画していることだ。テーマは「稼ぐ文化への展開」。京都市も文化庁移転の「矮小化」を危惧し、関西全体で受け入れるものとしてとらえたうえで、文化と産業との連携を全国に伝えたいという。パネリストには、文化・芸術分野、識者のほか関西の経営者を考えている◆移転後の新・文化庁には、従来の文化芸術の枠にとらわれず、観光・産業との連携を舵取りする役割が期待される。京都市の動きに、宮田長官の提唱する「文化と経済と観光の三輪車」がシルエットだが、見えてきた。
(田中 伸明)