【人口増加時代に失ったものを取り戻そう】

222回 123

滋賀県知事
三日月 大造 氏
「滋賀からつくる新しい豊かさ」

 わたしは昭和46年生まれで43歳。知事としては全国3番目に若い。この若さを強みにしてやっていきたい。7月以降、嘉田(由紀子前知事)さんから引き継いだ。国会議員時代と比べてどう、と聞かれるが、窮屈だ。行きたい所より、行かねばならない所、会いたい人より会わねばいけない人。ただ責任も大きいし、やりがいもあるなと感じる日々だ。
 大学を出て、JR西日本に就職した。電車の運錬士の資格を持っている知事はわたしだけ。あまり自慢にならないかもしれないが、わたしは誇りに思っている。滋賀から新しいものをつくりだしていければという思いで仕事をしている。
 滋賀県は人口が減っていないからいいですね、と言われるが、来年4月からは減少する。人口減少を真正面に据えた政策をやっていく。琵琶湖を大切にした取り組みをしたい。滋賀の来年度からの基本構想というものを今、練っている。2040年を見据えて当面、4年間何をするかということだ。滋賀県の強みは琵琶湖を守るためにみんなで率先していこうという意識の高さにある。若い人が多いのも滋賀県の特徴だ。草津を中心とする南部は25年後も人口が増えると予測される地帯で、こうした若さを生かしていきたい。あまり知られていないが、大学数が全国3位。大学を生かした街づくりを考えていく。
 人口減少は大変なことだが、人口増加時代に失ったものを取り戻そうと発信している。居住空間とか緑地とか。そういうものを見詰め直す時代に滋賀が率先して取り組んでいく。
 比叡山延暦寺、国宝彦根城など自然も歴史も資産、資源が豊富にある。湖北地方では、仏教文化も大変大切にされている。織田信長の比叡山焼き討ちの影響もあったかもしれない。秘めた仏教文化が滋賀県の魅力と言っている。空港もいらない、新幹線もいらないというある意味では贅沢な県ではある。
 日本海と太平洋側、西日本と東日本の中間地点にあるために、非常に通過していく人が多い県である。なるべく降りていただこうとスマートインターチェンジを増設した。北陸新幹線は米原に持っていくべきだと思うが、その後はどうするべきか、議論していかなければならない。
 水を持っていることが私たちの強み、役割と考えている。あまり知られていないことだが、琵琶湖は世界有数の古代湖。琵琶湖にしか住んでいない固有種が50種以上いる。こういう生態系を含めて大切にしていきたい。滋賀から新しい豊かさをつくりだそうと、基本理念づくりも検討している。「自分」だけでなく、「今」だけでなく、「もの」だけでない、将来も持続的に実感できる「心」の豊かさというものだ。
 エネルギー問題もそういう文脈で考えている。これまで通りの原発に依存するエネルギー社会が限界にあるという中で、原発に依存しない社会を滋賀が率先してつくっていくことができないか、ということを議論させてもらっている。こういう取り組みを基本構想なり、産業振興ビジョンの中にしっかりと取り入れてやっていく。
 全国学力テストの結果は低く、議会からやり玉に挙がった。たかがテスト、されどテストという認識で考えていきたい。点数より学習状況調査の方を重視して、教委と対応策を検討している。(橋詰悦荘)

 

講師略歴(講演時)=1971年、滋賀県出身。
県立膳所高校から一橋大学経済学部に進み、94年卒業、JR西日本に入社。
駅員、運転士など現場で働く大切さを学び、20119月、日本鉄道労組(JR連合)青年・女性委員会議長、同11月西日本旅客鉄道労組(JR西労組)青年女性委員長(専従)。
022月、JR西日本を退職。同4月、松下政経塾入塾(23期生)。0311月、第43回衆院選で初当選し、4期連続当選。この間、観光立国推進基本法など多くの法案にかかわり、国土交通大臣政務官、同省副大臣などを歴任。147月の滋賀県知事選に、嘉田由紀子前知事の後継者として立候補し、初当選した。

 1995年の阪神大震災の際に被災地でボランティア活動を行い、政治の大切さを痛感した。座右の銘は「一期一会」「着眼大局着手小局」「一人の百歩より、百人の一歩」。趣味は読書・旅行・テニス・版画・書道・街巡り・鉄道。妻子5人家族。