池坊専好さんを迎え新年会員交流会

咲いている花だけでなく、枯れた花や古い枝

――自然のありとあらゆる姿に美しさがある 

池坊専好さん

2018年01月24日第254回定例昼食会

華道家元池坊次期家元
池坊専好(いけのぼうせんこう)

 伝統文化生け花の哲学と継承への意欲を語る関西プレスクラブは124日、第254回定例昼食会を兼ねた2018年新年会員交流会をヒルトン大阪で開催し、華道家元池坊の次期家元、池坊専好さん=写真=が「“伝統文化”いけばなの今とこれから」をテーマに講演した。池坊さんは「生け花には色あせない哲学や独自の美がある」として、今後も日本の伝統文化の発展に積極的に貢献していく意気込みを語った。生け花の実演では会員や招待者約100人が華麗な手さばきに見入った。懇親会には英国や中国、インドネシアなど駐関西の各国総領事館からの出席者も参加し、池坊さんと言葉を交わした。(増田 和則)
 池坊さんは講演の冒頭「伝統文化の大きな問題は、会員が高齢化していることや、会員数そのものが減っていることだ」と、華道の厳しい現状を説明した。「生け花をする若い女性が減ってきた。これまでは花嫁修業としてお茶とお花は学んだが、今は自由な時代で、本当に興味のある人が学ぶという変化がある」と指摘し「生け花存続のために必要な一定の入門者数を見込めない時代なので、どのような未来をつくるのか模索している」と話した。
 こうした中、興味を持ってもらうために、中学校や高校の必修授業に生け花を取り入れるよう働きかけていることや、関西を含む一部の大学でも華道が単位認定されるようになってきていることを挙げ、「できるだけ若い世代に生け花を学んでもらいたい。集中や取捨選択する力を身につけることにも役立つ」と訴えた。伝統文化の継承への危機感は強く「いくら美しいものでも実際に買ってもらい、見てもらえないと、社会で生き残っていけない」と強調した。


 メディアへの発信力の重要性にも触れ、池坊のPR部隊である男性華道家の「IKENOBOYS(イケノボーイズ)」のツイッターを「フォローしてほしい」と呼び掛けた。「男性が花を生けても変ではない」との意味も込めて命名したと言い、愛好家の裾野を少しでも広げたいとの思いをにじませた。
 海外での普及については「世界的に見ると生け花人気は上がってきている。欧米ではそれなりに定着している上、このところは中国やロシアなどで目を向けてもらえるようになっている」と紹介した。入門者の取り込みに向け、英語版の生け花セミナーを始めたことも披露。「海外では日本文化が注目され、実際に勉強したいという人が増えている」と華道が関心を集めている背景を解説した。


 池坊さんは華道の持つ伝統文化としての役割に言及し「生け花の世界観や哲学は本当に深くて真理となるものだと思う。時代が変わってもさびることはない」と指摘した。「咲いている花だけでなく、枯れた花や古い枝といった自然のありとあらゆる姿に美しさがある」とした上で「もうかることや、強い者がよいといった考え方とは全く異なる物差しだ。今の時代だからこそ、大きなメッセージになる」とアピールした。
 人工知能(AI)やロボットを使った生け花についても「AIで誰が見てもいい作品がつくれるようになっても、おそらく(人が携わる)生け花文化が廃れることはないだろう」と語った。「技術がつたなくても、自分で一生懸命考えて自分の手を使って表現したい、大切な人に思いを伝えたい、と生け花をやりたくなる人がいるのではないか。生け花には人が人らしく生きる魅力がある」と訴えた。


 文化としての継承には「単に趣味だけではなく、生産性があって経済効果に結びつき、生け花で仕事ができる環境を育てたい」と話し、次世代に伝える華道家が生活に困らない環境をつくる必要性を強調して講演を結んだ。

 実演では、サクラがメインの生け花の完成作品を見せた上で、その作品で引き立て役だったフリージアを主役に据え、既成の型を持たない「立花新風体」の作品づくりを披露。また、華道を身近に感じてもらいたいとして、剣山の代わりにストローを土台にし、コップを花器の代わりにして花を生けた。
 交流会の会場にもこれらの作品が並べられ、参加者は写真に収めたり、角度を変えてのぞき込んだりしていた。池坊さんにあいさつする参加者の列は途切れることがなかった。

講師略歴(講演時)=小野妹子を道祖として仰ぎ、室町時代にその理念を確立させた華道家元池坊の次期家元。京都にある紫雲山頂法寺(六角堂)の副住職。「いのちをいかす」という池坊いけばなの精神に基づく多彩な活動を展開している。2012年より、諸災害の犠牲者慰霊、被災地復興や人々の幸せと平和を願い、西国三十三所の各寺院を巡礼、献華を行い20165月に結願した。2013年には米ハーバード大学でワークショップを開催、またニューヨーク国連本部で世界平和を祈念し献華を行った。現在は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員会委員を務める。アイスランド共和国名誉領事。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程修了。