民間会社が経営する公立美術館

 2022年2月2日、当初構想から、約40年ぶりに開館する大阪中之島美術館は、朝日ビルディングが設立した「大阪中之島ミュージアム」が経営・運営を担います。これは、改正PFI法に基づく公共施設等運営(コンセッション)事業です。公共施設の所有権を公的機関に残したまま、運営を特別目的会社として設立される民間事業会社が担う「公設民営」事業で、運営を利用者や事業者の目線により近く、かつより自由な裁量で行えるのが特長です。
 これまで国内のコンセッション事業といえば、多くは空港や上下水道、道路、MICE施設などがあり、よく知られているのはオリックスと仏空港大手バンシ・エアポートの企業連合が運営する関西エアポートがあります。大阪中之島美術館は、国内の公立美術館では初めて民間会社が経営を担うという野心的なプロジェクトと言えます。
 開館の7か月前の今年7月1日付で、菅谷館長ら学芸員のみなさん11人に加えて、朝日ビルディングの社員4人が、大阪中之島ミュージアムに出向し、同じオフィスで業務をスタート。現地で採用されるスタッフも一緒になって、運営を担います。
 駐車場などを含めた美術館全体の敷地面積は、ほぼ甲子園球場のグラウンド面積と同じ1万2900平方メートル。そこに総額250億円(土地代含む)をかけ、地上5階建ての建物を建設。設計は、コンペを競り抜いた新進気鋭の建築家・遠藤克彦氏が担当。漆黒の外壁が浮き上がるデザインが異彩を放ちます。
 国内の美術館では最大規模の商業サービス施設(約1000平方メートル)と300人収容のホールも兼ね備え、さまざまなイベントに活用できる広場(芝生部分約900平方メートル)といった充実した施設を、私たちは最大限、有効活用して、さらに磨きをかけ、運営に生かします。
 大阪・中之島には、南隣りに国立国際美術館、東には中之島香雪美術館、そして、大阪市立東洋陶磁美術館と3つの美術館があり、私たちも連携をしながら、大阪そして関西のアートの一大発信拠点としての機能に磨きをかけて行きます。(大阪中之島ミュージアム社長・曽根宏司・朝日ビルディング専務=関西プレスクラブ会員)

主要な収蔵品の一つ、佐伯祐三の「郵便配達夫」(1928年)