事務局発48号

 618日朝に大阪北部で発生した震度6弱の地震。わが家も突き上げるような振動で、本の山が崩れた。後片付けをしながら、なつかしい物を見つけた。小箱にたたまれた風呂敷「新板大坂之図」。江戸時代の古地図をもとに製作された1995年のAPEC(アジア太平洋経済協力)大阪会議の記念品だった。首脳会議の会場となった大阪城を中心に、活気にあふれる大坂を描いているこの年1116日から4日間にわたって開かれた会議は、18か国・地域の首脳、外相、経済担当相らが集まって世界の貿易・投資問題などを話し合った。記念品はプレスキットに入っていたかと記憶する。当時、APECを取材した証だ◆APEC風呂敷を見て、来年6月にG2020か国・地域首脳会議)が大阪で開催され、2021年のワールドマスターズゲームズ関西、そして25年の万国博覧会の大阪・関西への誘致――。なんとなく昨今の空気にデジャブを感じた理由が、腑に落ちた◆23年前もそっくりの状況だった。1万人に上る各国代表、随行、報道機関を受け入れ、APECでの実績を足掛かりに、2000年の「大阪サミット」、2008年の「大阪五輪」と「世界都市・関西」にステップアップする。APEC前年の94年秋には関西国際空港が開港し、サミットを想定した大阪国際会議場は2000年春完成予定、五輪会場には大阪港の舞洲をあてるなどインフラも整いつつある。「世界都市」は目前のはずだったしかし、サミットは沖縄へ、五輪誘致は大惨敗で北京に。首都圏より傷が深かったバブル崩壊に続く、世界デビューの失敗は、経済指標の落ち込み以上の失望感を関西の官民にもたらす結果となった時を経て外部環境は今、格段に良い。民間シンクタンクの推計では、2017年の関西の訪日外国人客数は1207万人と3年前の2.5倍に増えた。同じ期間の関東の1.9倍を超え、実数でも1457万人の関東に迫るその消費額は1兆円の大台を超え、これも3年間で2.8倍。別の調査では、17年の大阪への渡航者数の伸び率は24%と2年連続で世界一。関空の17年度の国際線旅客数は前年度比14%増の2190万人と過去最高で、関西エアポートの決算は大幅な増収増益となった。近畿の百貨店売上げも毎月、東京圏より高い伸びを続けるAPEC当時、関西がいくら「世界都市」と力んでも、反応を期待したアジア・太平洋の諸国は、まだ爆発的な経済成長の前夜だった。今や中国のGDP(国内総生産)は95年当時の16倍に拡大、日本のGDPの2倍を超える経済大国となった。アジアは豊かになり、他力ではあるが、関西を「世界都市」に押し上げてくれている実は関西プレスクラブも、プレス機能を整備することで関西の情報力を高める.として、APEC大阪会議前年の5月に設立されたインフラの一つだった。否応なく世界の舞台に立たされる関西。そこで活動するプレスも、国際標準の力をあらためて試される。結果がデジャブにならないよう、関西も、プレスクラブもこれからだ。 (田中 伸明)