事務局発59号

NHKのSF時代劇「大奥」が昨年12月12日に最終回の放送を終えた。江戸時代、未成年の男子だけがかかる赤面疱瘡(あかづらほうそう)という感染症がまん延し、男性の人口は女性の5分の1まで減少、将軍や大名から商家まで女性が後を継ぎ、権威・権力を占める男女逆転の世が舞台。よしながふみさんの漫画が原作で全19巻を大人買いしてしまった。
荒唐無稽な物語ではない。初代女将軍の家光の鎖国令は、異国からの侵略を警戒し、男子が少ないことを知られないようにするため。蘭学の導入に積極的だった八代将軍・吉宗(女性)も、日本だけ男子が極端に少ない事実を知り、鎖国を解くことはなかった、など理屈に合う筋立てだ。
吉宗の遺命を受けた人々の努力によりワクチンにたどりつき、男子の人口が急速に回復して幕末を迎える。歴代の女将軍たちは高い志を持って「戦のない世」を続けたが、最後の将軍・慶喜(男性)が戊辰戦争に火をつけた―。プーチンやゼレンスキー、ネタニヤフがもし、女性だったら、武力に頼らない解決方法もあったのでは、とフィクションの世界につい引きずられてしまう。
年明け。現実の世界では、毅然とした女性たちが多くの人命を守った。1月1日に起きた能登半島地震による大津波警報で、「テレビを見ていないで逃げて下さい」と、NHKの山内泉アナウンサーが叱るような強い口調で叫び続けたことが、住民の避難をどれだけ促したことか。翌2日の日航機と海保機の衝突炎上事故では、客室乗務員の女性たちの冷静で迅速な誘導が、乗客・乗員379人全員を救った。
今、関西は外交の分野で女性が力を振るっている。イギリスのキャロリン・デビットソン総領事、フランスのサンドリン・ムシェ総領事、ドイツのメラニー・ザクシンガー総領事、英仏独、欧州主要国の在関西の外交官トップはいずれも女性だ。大阪・関西万博の開幕が迫る難しい時期に、自国パビリオンの建設に目途をつけ、完璧に使命を果たしている。
女性の政治参画でも関西は先進地域だろう。内閣府が23年6月にまとめた市区議会に占める女性議員の割合で、1位の京都府南丹市(39・7%)はじめ、4位和歌山県有田市(37・6%)、6位奈良県宇陀市(36・7%)、8位和歌山県岩出市(36・2%)と、トップ10に関西の地方議会が4つ、関西広域連合に参加する徳島県の三好市(2位、39・3%)も加えると5つも入っている。
よしながふみさんの「大奥」では、男性は種の存続のため貴重として仕事もさせず、大事に育てられ、優柔不断、ひ弱な姿で描かれる。どこか今の二世、三世政治家を連想させる。毅然とした女性政治家が、地方議会から育って行くことを期待したい。
赤面疱瘡発生のきっかけは、少年が熊に襲われ、熊の病が人に広がったことだった。そういえば、昨年は各地で熊が出没し人を襲う事故が多発した。もしかしたら、「大奥」の次章が始まっているのかもしれない―虚実混濁、お許しを。
(田中 伸明)