事務局発「風の電話」

 岩手県の沿岸部、大槌町にある「風の電話」を初めて訪れたのは、東日本大震災から3年後の20141月のことです。当時大学3回生でした。白い電話ボックスに黒電話が一つ。電話はつがっていないのですが、亡くなった遺族や友人へ受話器を取って語りかけることで、気持ちをはき出し、心を癒し、支えてくれるグリーフケアの場所として知られています。外国からも含め年間約3万人が訪れるそうです。 

「風の電話」


 西宮市の自宅で2歳半の時経験した阪神大震災の記憶は今も鮮明です。「同じつらさを味わった皆さんのため、何かできることはないか」とずっと考えていました。その時に見つけたのが「日本さくらの女王」の募集でした。国内外で桜の植樹を進めることが「女王」の重要な役割です。もし選出されれば、あの場所に桜を植えて皆さんの心を慰める一助になるのでは、との思いで応募しました。
 幸い20182月に選出していただき、すぐに「風の電話」のオーナーの佐々木格さんと、女王を選出する「日本さくらの会」に思いを伝え、1110日に植樹が実現しました。植えたのは復興桜「はるか」を含めて7本の苗木です。「はるか」は復興への願いを込めてつくられた新種で、小ぶりですがしっかりした八重の花を咲かせます。母校の武庫川女子大学からは「心の声に耳を澄ませて下さい。そして、時を超える命の響きを確かめてほしいと願います」とのメッセージを書いたプレートをいただきました。

 

復興桜「はるか」の横には記念プレート

 

植樹の模様は地元の岩手めんこいテレビ、岩手朝日テレビが取材し、夕方のニュースで取り上げた。右は佐々木格さん

 植樹で終わりではありません。この日からまたスタートです。これからずっと自分が植えた桜を見守っていきます。数年後に爛漫に咲くさくらが、「風の電話」を訪れるすべての人の心を癒してくれると信じて。

(辰己 由貴)