森ノ宮キャンパスを東西軸の拠点に
関関西プレスクラブと大阪公立大学は3月1日、「大阪のまちづくり これまでとこれから~森之宮キャンパス開設を機に考える」をテーマにした共催フォーラムを、大阪駅前第2ビルにある公立大の梅田サテライトで開催した。
冒頭、辰巳砂(たつみさご)昌弘学長は、公立大が2025年秋に第1期をオープンさせる森之宮キャンパス(大阪市城東区)について「大阪では従来の南北軸に加えて、大阪・関西万博の会場や統合型リゾート(IR)が進出する臨海部から、森之宮を含む東西軸に沿った大規模な街づくりが進められている」と指摘。「イノベーションアカデミー事業のヘッドクオーターを置く森之宮キャンパスは、大阪城東部のスマートシティー化に向けた司令塔の一翼を担うことになる」とあいさつした。
続いて、3人の教授がそれぞれの専門分野から大阪のまちづくりについてプレゼンテーションをした。
阿多信吾・情報学研究科教授は新キャンパスで様々なデータを取得して室内環境制御などに生かすビルOS(基本ソフト)の実験を進め、周辺地域にも広げていく構想を披露。「学生が社会課題を解決するベンチャーを周辺に立ち上げて、相互交流できるような関係をつくりたい」と述べた。
横井修司・農学研究科教授は大阪市内で増加している空き地を都市農業の用地として活用することで「農業への理解増進や副業の多様化、防犯など多様な効果を期待できる」と指摘。データの蓄積と分析によって初心者でも農産物を生産できるコンテナ栽培などの実例を示した。
また、小川亮・経済学研究科教授は国内総生産(GDP)統計の分析から「日本はオープン・イノベーションなど組織改革や、リスキリング(学び直し)など人的資本投資が弱い」とし、大阪・関西経済の復活のカギも無形資産投資の充実にあるとの見方を示した。
最後に福島伸一理事長が、大阪公立大がこれから取り組む3つの重要な点を挙げた。
第1が国際力の強化で、国内外の研究者、学生から選ばれる大学を目指す。教育・研究の国際化に対応するため秋入学導入への挑戦も検討していく。
第2が25年秋に創設する未来社会創生研究所をはじめとする都市シンクタンク機能の充実。個人の心身の健康や幸福を重視する「ウェルビーイング」な大阪モデルの研究を進めるとともに、行政への政策提言もしていく。
第3が技術イノベーションの強化を図るイノベーションアカデミー事業による大阪の産業発展への貢献とスタートアップの創出だ。 大阪城東部地区まちづくりの1・5期開発に間に合うよう、大阪メトロは28年春に森之宮新駅を開業させる予定。福島理事長は「大阪のスマートシティ構想の先導的な役割を期待されている森之宮は東西軸の結節点になる。『ヒガシ』をキタ、ミナミと並ぶ拠点にしていきたい」と抱負を述べた。(宮内 禎一)

大阪公立大学が2025年にオープンさせる森ノ宮キャンパスを中心とした「ヒガシ」をキタ、ミナミと並ぶ大阪の中心にしたいと述べる福島伸一公立大学法人大阪理事長

講演を行う学長 辰己砂昌弘氏

講演を行う農学研究科 教授 横井 修司氏