現代の基盤は脆弱。急激すぎる変動はスピードを落とす必要がある

第262回 2018年11月28日 

立命館大学古気候学研究センター長
中川 毅なかがわ たけし

私たちはどんな地球で暮らしたいのか
-古気候学が語る「今と似ていない時代」-

 12月2日からポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)に先立ち、立命館大学古気候学研究センター長の中川毅教授を迎えて開いた定例昼食会では、地質考古学の手法で分析した地球の気候変動の歴史をもとに、現代の地球が置かれた現状と課題を提言した。
 中川氏は過去5億年前からの地球の歴史をふまえ、1億5千万年周期や10万年周期など一定のスパンで、大規模な気候変動が起こってきた事実を説明。氷河期と間氷期を繰り返す大規模な気候変動は「銀河の動きや地球の公転など、天文学的、地質学的な要因で起こるため止めようがない」と述べた。
 また中川氏は、過去10万年にわたって積もり続けたグリーンランドの雪の大地(氷床)を3000㍍に渡って掘り下げ、夏冬で異なる不純物などの層を分析し、過去6万年の気候変動を分析したデンマークのニールス・ボーア研究所を中心とするグループの研究を紹介。前回の氷期が終わるまでの間は「激しい気候変動が、非常に短いスパンで発生したが、氷期が終わった約1万1600年前から現在にかけては、長く安定した状態が続いている極めて例外的な時代にある」と分析した。
 続いて、自身が手がけた水月湖(福井県若狭町)の堆積物が作り出す縞模様(年縞)を分析し、過去5万年までの地質学における「世界標準」となった研究結果などを元に「氷河期の終わりは長くて3年、短ければ1年で急激に気候が切り替わり、地球は暖かく安定した」と述べ、現代につながる安定した時代への変化が急速に進んだとの見方を示した。
 中川氏は、過去に氷河期が訪れた周期を踏まえると、現代はすでに寒冷化に突入していたはずだが、「温室効果ガスにより人類は無自覚に氷期を回避した」とする学説を紹介した上で、「現代の基盤は思っている以上に脆弱。急激すぎる気候変動については、変化のスピードを落とす必要がある」と結論づけた。(内田  博文)