第258回 2018年5月22日
関西エアポート代表取締役社長 CEO
山谷 佳之 氏
「関西の未来・3空港の役割」
関西エアポートはオリックスと仏バンシ・エアポートが40%ずつ、残りを関西の企業約30社から出資を受けて設立された。バンシは日本での知名度はないが、世界で多くの空港の運営をしており、売上高5兆3千億円、直近の当期利益3千億円という大企業だ。コンセッションに応募するにあたって、関西空港と伊丹空港の運営を2016年4月から44年間、きちんとやり遂げる力のある企業と組んだ。
今年4月からは子会社が神戸空港の運営を始め、3空港一体経営の体制が整った。3空港は全部で5本の滑走路を持ち、4755万人の利用者がいる。その滑走路をいかに有効に使っていくか、我々が方針を打ち出し、3空港懇談会で地元や国と話をしながら固めていかねばならないと考えている。
バンシ出身者とは長時間、議論をしている。この共同経営を通じた交流で日本とフランスの関係をさらに深められればと思っている。近年利用者が増えているのは関西空港の国際線だ。訪日外国人、インバウンドの急増で対前年比の伸び率は2015年が13%、16年が21%になった。伊丹も利用者が底を打ち、回復途上にある。国内の景気が回復したのと、羽田空港の国際線化が進んだことで伊丹から羽田経由で欧米に行く方が増えた。これは欧米路線が少ない関空にとっては悔しい話でもある。国際空港では当然、乗り継ぎが重要になる。しかし、関空のトランジット客は1%にも満たず、関空の現状はハブ空港とは言えない。一方、訪日外国人が伊丹から飛行機で国内に移動するケースも増えている。
1995年、関空から海外に行く人(アウトバウンド)とインバウンドの比率は77対23だった。それが今は逆転し、7対3でインバウンドが多くなっている。格安航空会社(LCC)の比率も高まっており、2018年の国際線は40%に迫るだろう。関空は2本の滑走路を24時間運営している。天候不順などで遅延しても常に着陸でき、夜中に離陸もできる関空は少ない機体をやりくりしているLCCが利用しやすい空港だ。
LCCは現在、航続距離約4000キロまで、飛行時間4時間までの都市との間で運航されている。関空は成田に比べてアジアの主要都市との距離が短い。今後航続距離が長い飛行機が開発されればバンコク、シンガポールと結ぶLCCの路線ができるだろう。
世界の空港のランキングを見ると、経済発展するアジアの空港の利用者が伸びている。関西の3空港を一元運用するので、世界で大空港と呼ばれる利用者5000万人を目指したい。ただ、日本はGDPが伸びていない。日本の中でも停滞している関西は世界で一番GDPが成長しない地域かもしれない。しかも、今後の人口の推移をみると日本は大きく減る。観光が非常に有望な産業だ。そのためには関西の魅力向上が大事になる。空港だけが頑張っても空港は成長しない。地域一体で観光を推進していくことが必要だ。大阪での統合型リゾート(IR)開業、万博の開催が決まれば大きい。アクセスでは、関空から南海特急に乗って40分で行けるミナミがにぎわっているのに対して、ビジネスの中心である本町、淀屋橋、梅田には直通で行けない。なにわ筋新線にはできるだけ早く開業してほしい。
関空を勤務地とする従業員集めは、現在、かなり厳しくなっている。空港の発展のためには労働力の確保もこれからの課題だ。テクノロジーを駆使した省力化投資をしていく。
伊丹は4月、ターミナルを改装した。出口を中央に集め、モノレールの乗降をしやすくした。レストランの営業時間も延ばした。航空機に搭乗しない近隣の方にも空港に来て楽しんでいただきたい。(堀田 昇吾)
講師略歴(講演時)=1956年大阪市生まれ。80年に神戸大学農学部を卒業し、オリエント・リース(現オリックス)に入社。2002年オリックス信託銀行(現オリックス銀行)社長。09年オリックス不動産社長。オリックス副社長を経て2015年12月、関西エアポート社長・CEOに就任した。様々な事業開拓に取り組んできた。破綻した山一証券の子会社「山一信託銀行」の株式譲り受けを手がけ、無支店化による身軽な銀行を展開。オリックス不動産では、東京スカイツリータウンのすみだ水族館や京都水族館、グランフロント大阪の知的創造拠点「ナレッジキャピタル」の開発を指揮した。関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の運営権取得を巡っては、オリックス副社長として仏建設大手バンシとの交渉をはじめ、44年間にわたる空港コンセッション契約を実現させた。関西エアポートには、オリックスとバンシ系の空港運営会社が40%ずつ出資するかたちとなっている。車で空港へ行き、飛行機で目的地に着くとレンタカーを借りて名所を回る旅が楽しみ。「1+1=2を全ての基本に置いて考える」がモットー。