サミットで自然と成長を調和させるメッセージを発信したい

234回 2016129

三重県知事
鈴木 英敬 氏
「伊勢志摩サミットで関西を元気に―千載一遇のチャンスを生かして」

  41歳は知事として全国最年少だ。歴史上では2番目に若い。現在は3歳の息子がいる。4月に第2子が誕生の予定。一人目の時に育休のようなものを取った。個人的には関西とのつながりも多い。妻は京都出身だ。関西のみなさんとは深くやらせてもらっている。
 三重県は関西空港から2時間とアクセスがよい。近畿日本鉄道も阪神電鉄と相互乗り入れしている。三宮から伊勢志摩に直行できる。南の方も、紀勢自動車道が開通して便利になってきている。三重県はこの25年間で県外からの企業立地が509件あり、そのうち263件が関西圏に本社を置いている。経済活動でも絆が深く、関西からの観光客が少しずつではあるが増えている。
 昨年6月、安倍晋三首相から記者会見する直前に電話をもらい、「サミットを三重県でやることに決めました」と言われた。30秒後に電話をかけてきた今井尚哉首相秘書官に名称を相談された時、「賢島だと狭いな」と思い、「伊勢志摩サミットでお願いします」と伝えた。

 伊勢志摩サミットで強調したいのは伊勢神宮のことだ。神道は人種や宗派、世代、性別を超えて寛容に生きるよう教えている。「イスラム国」(IS)のような過激派以外の人たちが、多様性を寛容に受け入れていかないと平和には近づけないと思う。各国首脳にも訪問してもらい、そういうメッセージを発信できるよう期待したい。また、三重県は四日市公害も経験し、大気汚染、水質・土壌汚染を乗り越えてきた。環境と成長、自然と成長を調和させて生きてきた。そういうメッセージも出せたらいい。
 サミットの関係では、テロ対策も重要だ。パリでテロがあり、ソフトターゲットへの対応が非常に重要になってきた。地域住民や民間にも協力してもらい、官民挙げてテロ対策をやろうと「テロ対策三重パートナーシップ推進会議」を立ち上げた。サイバー攻撃への対策、コンビナートなど重要施設への立ち入りも緊急にやっている。消防救急の強化では、東京都知事に協力を要請した。
 全国で初めて小型無人機「ドローン」の規制条例もつくった。2か月間、賢島周辺での飛行を禁止する。先般の航空法改正は人口密集地などが対象で、サミット会場での飛行を止めることができない。このため県として条例をつくった。
 次に関西との関係を話したい。関西空港は年間の外国人旅客数が初めて1千万人を突破、格安航空会社(LCC)を含め大変好調に推移している。サミット開催を三重県だけでなく、関西にとっても千載一遇のチャンスにしていただけるよう連携したい。
 関西を含めた周遊ルートをしっかりつくっていく。三重県には74のゴルフ場があるので、ゴルフツーリズムを関西を含めてやりたい。2017年に大阪では「食博覧会」があり、「全国菓子大博覧会」が伊勢である。食の博覧会がほぼ同時にある。是非連携したい。2021年には、「関西ワールドマスターズゲームズ」が春に開かれた後、秋に三重県では国体と全国障害者スポーツ大会がある。連携できればと思っている。関西広域連合のみなさんとも話しているところだ。

 一過性にせず、サミットの後、「ポストサミット」も大事なので、タイムスパンを描きながら取り組んでいきたい。(高橋 雅哉)

 講師略歴(講演時)=1974年兵庫県生まれ。
98年東京大学経済学部卒、同4月通商産業省(現・経済産業省)入省。
06年に第一次安倍内閣で官邸スタッフとなり、教育再生や地球環境問題などをリード。
11年、三重県知事に当選(当時36歳、現在も現職で最年少知事、歴代2番目の若さ)。154月再選、現在2期目。
政府少子化タスクフォース委員、地方分権改革推進本部「農地制度のあり方に関するプロジェクトチーム」座長などを歴任。「14年度世界経済フォーラムヤング・グローバル・リーダーズ」に選ばれ、「15年度イクメンオブザイヤー」を受賞するなど、知事本来の業務に加え、多彩な活躍を続けている。
家族は妻と長男、今年4月に第2子誕生予定。長男誕生の際に育児休暇を取得(現職知事では2人のみ)した。妻はシンクロナイズドスイミング五輪メダリストの武田美保さん。座右の銘は、吉田松陰の「夢なき者に理想なし理想なき者に計画なし計画なき者に実行なし実行なき者に成功なしゆえに夢なき者に成功なし」