第246回 2017年3月23日
大阪商工会議所会頭(大阪ガス会長)
尾崎 裕 氏
「最前線×最先端で、大阪・関西を活性化」
大阪商工会議所はこの4月から「たんと繁盛 大阪アクション」をスタートさせる。2030年をめどに大阪・関西が目指す都市像を描いた戦略的プロジェクトだ。この際、東京一極集中の問題は避けて通れない。高速交通網をつくり、地方促進をするはずだったが、結果は逆でストロー効果により東京に吸い上げられている。人も企業も集中している。
だが、このサイクルは、人材を供給するほど地方が豊かであればいいが、過度になると地方が破たんする。それで一番困るのは東京だろう。地方はしっかりとしなければならず、人・モノ・カネ・情報を地方に還元させなければならない。
災害時のバックアップの視点も大事で、国の省庁なども関西や仙台、福岡など分散しておいた方が良いと思う。はじめは不便だろうが、結果として整備されていくことになる。
まずは退路を断つこと。例えば日銀本店を大阪に移してはどうか。江戸時代、政治は「江戸」、経済は「大阪」だった。明治から昭和にかけ、「経済の大阪」は維持されてきた。政治と経済は距離があった方がいい。冷静に見ることができるからだ。
大阪、関西には元気で新しいことに挑む企業がたくさんある。アジアからのインバウンドでも成田より関空が1時間早く到着出来る。今後はリピーターを伸ばすことが課題だ。加えて、大阪・京都以外の都市にも観光に行かせる努力が必要だ。
2025年の大阪万博は大変意義のあることだと考えている「いのち輝く」というテーマもいい。パリとの競争に勝たなければならないが、新たな万博のあり方を発信していきたい。「夢洲」などベイエリア地区をスーパー特区として、さまざまな実証実験をするフィールドにできないか。今あるモノを無駄にしないことが重要だ。
こうした状況を踏まえ、日本を複眼的にとらえると、大阪・関西は一つの「極」になることが必要。東京の真似ではない、ともに成長する都市を目指したい。また、地の利、人とのつながりを活かし、アジアとともに成長する「アジアのゲートウェー」になりたい。大阪のポテンシャルは高いはずだ。関西人らしい「おもてなし精神」で、アジアでの関西を位置づけていきたい。
大阪アクションには3つの戦略フィールドがある。一つは「ウエルネス加速」で、ライフサイエンス産業を充実させる。二つ目は「インバウンド増進」で、観光消費や対内投資の拡大を促す。三つ目は「マーケット創出」。次世代のモノづくりの振興をはかることだ。
実証実験のできる都市として、スポーツを核としたビジネスの創出や、ものづくりDNAを活かした「メイカーズ大阪」、「町工場ネットワーク」の構築も目指したい。さらに中小企業の人材確保にも役立てたい。
最後になるが、商工会議所の役割は会員企業を元気にすることが使命だ。元気や、やる気を持ってもらい、地域全体が活性化するのが理想。しっかりと腰を据えて、地域の企業と寄り添いながら、大阪・関西を元気にするために汗をかく。そしてメディアの力もお借りし、最前線、最先端を行く新しいモノを生み出し、活気あふれる大阪・関西の情報を日本中、世界中に広めてほしい。
(渋谷 卓司)
講師略歴(講演時)=1950年生まれ、兵庫県出身。
72年、東京大学工学部卒、大阪ガスに入社。
2005年、常務取締役、08年に代表取締役社長に就任。15年4月から代表取締役会長。
米国留学や大阪ガスロンドン事務所に勤務するなど海外経験が豊富。
社長になってからは、電力・ガスのエネルギー自由化に向けた収益力強化のため、電力をはじめ化学、燃料電池など新規事業の育成による事業多角化と、海外展開を積極的に推進してきた。日本ガス協会会長、日本熱供給事業協会会長として業界の発展にも尽くす。15年11月、大阪商工会議所の第26代会頭に就任、大阪・関西活性化の陣頭に立っている。
16年12月には、大阪商工会議所の新中期事業計画「たんと繁盛 大阪アクション」を発表、17年度から3年間にわたって取り組む。
「最小努力で最大効果」を信念に、仕事の品質を維持しながら、“いかに手を抜くか”をいつも考えているという。
趣味は「いろんなものをちょこっとだけする」ことで、音楽や数学など様々なジャンルを乱読。鉄道模型も大好き。
日本酒、ワインを「たしなむ」。座右の銘は論語にある「用行舎蔵(用いらるれば行い、捨てらるればかくる)」。