究極の衣食住を、入場者が体験して健康になる それが、今回の万博のイメージ

241回 20161028

大阪府知事
松井 一郎 氏
2025日本万国博覧会 大阪・関西開催に向けて」

 2025年の日本万国博覧会のテーマは「人類の健康・長寿への挑戦」だ。9年後の5月から10月の6か月間の開催を想定している。「今なぜ、万博なのですか」という意見がある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、官民上げて準備が進められているが、オリンピック・パラリンピック後の成長の次の一手が必要だ。万博は一過性のイベントではない。会場で驚きを持って体験、経験したことで大きなインパクトをもたらす。人類共通の課題に対する解決策を世界の人々との対話を通じて見出し、ライフスタイルを変えていくことができる。安倍首相は万博の開催を「わが国を訪れる観光客が増大し、地域活性化の起爆剤となる」と期待している。経済界のみなさんにも開催に向けて理解をいただいている。府の内外でムードが盛り上げってきた。
 テーマは全世界の国々が今後、直面する超高齢化社会への対応だ。日本の高齢化率は、飛び抜けているが、アジア諸国には日本よりも高齢化のスピードが早い国もある。高齢化の波はアジア諸国、途上国など世界に広がっていく。
 日本の平均寿命は世界で最も長いが、多くの国で、平均寿命は80歳を超えている。その共通の課題は、健康寿命と平均寿命の差が10歳もあるということだ。これによって、社会保障費などの問題が生る。
 一方で、途上国には、健康長寿が実現できていない国が多くある。三大感染症のひとつのマラリアが、途上国を中心に発症している。また、上下水道の未整備など衛生状態が課題で、公衆衛生の管理が大切となっている。超高齢化社会のトップランナーの日本は、世界のロールモデルとしてこうした分野で貢献ができ、世界に向けて解決策を示すことができる。万博は、その機会になると思う。超高齢化が進む日本の三大都市の中でも、最も高齢化が進んでいるのは大阪だ。大阪、関西、日本発の技術や取り組みは、途上国の人々の健康長寿のために大いに参考になるだろう。
 どのような万博になるのか、目指すのは「参加、体験型の万博」だ。世界中のあらゆる人が主体的に参加し、心も身体も豊かになるというこれまでにない万博をお届けしたい。これまでの万博は、展示型だった。1970年の大阪万博では月の石、2005年の愛知万博ではマンモスの化石といった珍しい品の展示型だったが、大阪で考えているのは体験、参加型。これまでにない万博を開催したい。企業の技術・サービスを結集した究極の衣食住を、入場者が滞在型で体験して健康になる。それが、今回の万博のイメージだ。
 場所は、大阪のベイエリア、夢洲を予定している。広さは、約100ヘクタール。ベイエリアにある既存の埋立地を有効利用し、誘致を目指しているIR(統合型リゾート)との相乗効果も期待できる。来場者の目標は、約3000万人を想定し、64兆円の経済波及効果を見込んでいる。パリが立候補するといっているが、日本が一体となり誘致に取り組み2025年の万博の大阪・関西開催を実現させたい。(奥田 雅治)

講師略歴(講演時)=19641月、大阪府八尾市生まれ。86年福岡工業大学卒業後、きんでん、大通に勤務。
2003年の大阪府議会議員選挙で八尾市選挙区から自民党公認で出馬し初当選(以後3期連続当選)。府議会では自民党議員団の政調会長などを務めた。
09年、府庁のWTC移転案に関する採決方法を巡る意見の相違から自民党府議団を出て新会派、自由民主党・維新の会を結成。
10年には地域政党・大阪維新の会を橋下徹大阪府知事、浅田均府議(当時、現参院議員)らと旗揚げし、幹事長に就任した。
1111月、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙で知事に初当選し、市長に当選した橋下氏らとともに大阪都構想を推進した。
国政政党・日本維新の会と維新の党でも幹事長を務め、1512月からは地域政党・大阪維新の会と国政政党・日本維新の会(16年8月におおさか維新の会から党名変更)の代表を務めている。1511月の大阪府知事選で再選され、現在2期目。