時代を先取りし「尖った」提言を続けていきたい

242回 20161116

関西経済同友会代表幹事(丸一鋼管会長)
鈴木 博之 氏
「元気溢れる関西を目指して」

 まず丸一鋼管という企業について。高炉メーカーが生産した鋼管を買って製品化することで成り立っている企業。独自の技術や製品によって競争しているわけではなく、独自の仕組みによって利益を創出している。最近は中国の躍進や国内需要の低下などが顕著だが、海外に拠点を設ける需要地生産体制などの仕組みによって筋肉質な企業体質を作り上げている。
 関西経済同友会は今年10月に70周年を迎えた。会員は個人の資格で参加。時代を先取りし、自由で大胆な発言や行動で知られる民間経済団体だ。他の経済団体にない試みとして『安全保障委員会』を設置し、「集団的自衛権の行使」や「日本版国家安全保障会議設立」を時代を先取りして提言した。
 同じく安全保障の見地から韓国訪問も定期的に実施。韓国の政府機関や民間の研究機関などを訪問し意見交換や情報収集を行っている。最近の北朝鮮について『綻びが顕著になっている』という見方があるが、逆に体制は強固になっているとの情報も得ることができた。
 またアメリカ・ボストンのハーバード大学ケネディスクールとのシンポジウムも定期開催している。トランプ大統領誕生という事態に、日米間の政治・経済・安全保障についての貴重な情報が得られると期待している。ボストンという都市は新規企業・ベンチャー育成の仕組みに熱心に取り組んでいる点で、大阪・関西にとっても非常に参考になるのではないか。
 さらに今年は大阪で「関西・ハーバード・フォーラム」を開催した。このような提言・事業によって、関西経済同友会は今年七月に外務大臣表彰を受けている。
 今後については、まず2021年に開催される「ワールド・マスターズ・ゲームズ」に注目していただきたい。世界150の国や地域から、国内もあわせ5万人の参加者が関西圏に集まる。関西活性化の大きなきっかけになればと期待する。
 このところ「MICE(見本市や国際会議など大規模なビジネスイベント)・IR」というテーマが注目されている。関西経済同友会も大阪・夢洲に国際規模のMICE施設の建設とともにシンガポール型のIR(統合型リゾート)の誘致を訴えている。IRは実現すれば8000億円規模の投資、10万人規模の雇用を生み出す大プロジェクトとなる。
 2025年の万博についても誘致委員会準備会に名を連ねている。誘致には地元の機運の醸成が不可欠となる。各メディアにはご協力をお願いしたい。
 こうした関西活性化策の実現にはインフラの整備が不可欠だ。「大阪までのリニア新幹線の早期開業」「北陸新幹線の大阪延伸」「高速道路の欠落区間の解消」などを実現すべく、ほかの経済団体や関係自治体とひとつになって訴えていきたい。
 第2期梅田北ヤード開発、中之島4丁目の医療センター構想も重要な問題となっていくだろう。関西経済同友会は、大阪・関西・日本に元気をあふれさせたいと願っている。時代を先取りし『尖った』提言を続けていきたい。(近藤 五郎)

 講師略歴(講演時)=1946年大阪市生まれ。69年東京大機械工学部卒、住友商事入社、73年にブラジル・サンパウロ駐在。79年に帰国後、80年丸一鋼管に入社。翌年アメリカ事務所長、83年取締役、84年東京事務所長。2003年社長に就任。13年から会長兼CEO。ブラジルでの商社マン時代に機械・プラント部門を担当、商権ゼロからスタートした同部門を採算がとれるまでにし、経営の原点を学んだ。その後、丸一鋼管のアメリカ事務所長として対米輸出拡大に奔走、輸出比率を30%に引き上げた。1985年のプラザ合意後の急速な円高により輸出が不採算となると、国内販売の拡大に注力。さらに、世界の鉄鋼業での中国の台頭や、国内の鉄鋼需要の減少を背景に、10年前からは海外事業を強化。現在、同社の海外売上比率は40%に達し、鉄鋼市況の激しい変化の中で、高い利益率と高い配当性向を実現させている。『決断して行動、責任を持つ』が経営者としてのモットー。今年5月、関西経済同友会代表幹事に就任。元気な大阪、関西の実現を活動目標に掲げる。大阪を基盤とするものづくり企業として、技術革新による中小企業の成長を模索している。