「伝統は攻めてこそ守られる」上方歌舞伎花形の中村壱太郎さん 新年会員交流会で語る

 関西プレスクラブの新年会員交流会が1月28日、会員、招待者ら約100人が参加して大阪市北区のヒルトン大阪で開かれ、歌舞伎俳優の中村壱太郎なかむらかずたろうさん(29)が、「受けつぎつなぐ上方歌舞伎」のテーマで講演した。聞き手を演劇記者の坂東亜矢子さんがつとめた。


 壱太郎さんは、祖父が人間国宝の坂田藤十郎さん、父が中村がん治郎じろうさんという、歌舞伎の名門に生まれ、4歳で初舞台を踏んだ。19歳のときに祖父の藤十郎さんの当たり役、「曽根崎心中」のお初を演じた。演目のお初は19歳の設定で、同い年のヒロインを見事に表現したことで評判となるなど、女形を主にこれからの上方歌舞伎を背負う存在として期待されている。
 講演で壱太郎さんは、上方歌舞伎と江戸歌舞伎の違い、名門を受け継ぐ心構えや今後の取り組みなどについて率直に語った。
 上方歌舞伎について壱太郎さんは「大げさに見得を切るなど様式的な江戸歌舞伎に対して、庶民的なものを写実的に大事に演じる芝居が多い」と、その細やかな魅力を説明した。
 また、「祖父も父も歌舞伎に出ることを強制することは全くなく、大学まで色々な世界を見るチャンスを与えてくれた。ここまで好きで歌舞伎をやってこられてありがたい」と、歌舞伎に自然になじんできた今までを振り返った。
 自身は東京生まれであることから、「上方歌舞伎は上方言葉を使うのが絶対条件。もっと自由に使えるようになりたい」と、上方へのこだわりを見せた。
 さらに、壱太郎さんは「伝統は攻めてこそ守られる」と、自らが信念とする言葉を強調。上方歌舞伎の伝統を継承するとともに、台本の創作や野外での公演など新しい分野に取り組む「攻め」の活動も紹介し、「歌舞伎への様々なニーズがある中で、規格外の発想も必要ではないか」と述べた。
 講演の後、壱太郎さん、坂東さんも参加して懇親会が開かれ、壱太郎さんの前には、上方歌舞伎の未来を託す逸材と言葉を交わそうと、多くの参加者が列をつくった。