「バリアバリュー~障害を価値に変える~」第324回定例会 ゲスト 株式会社ミライロ代表取締役社長 垣内俊哉氏 2026年9月4日開催

垣内俊哉氏は、障害を「人ではなく環境側にあるもの」と捉える社会モデルを基盤に、障害を価値へ転換する「バリアバリュー」の理念を語った。障害者を取り巻く課題をビジネスの視点で再定義し、企業がダイバーシティ&インクルージョン(多様性を認め、誰も排除せず参加できる状態をつくる考え方)を成長機会へ変えるための考え方を提示した。

まず「障害」という言葉の表記には「障碍」「障がい」「障害」と複数の選択肢があり、絶対的な正解はないと説明。企業が特定の表記を採用する際は、会社としてどんな理由でその表記を使うのか、説明することが大切だと述べた。

自身の経験として、大学時代に障害を理由にアルバイト不採用が続いたが、唯一採用された営業で成果を出し「車いすユーザーであることが強みになる」と気づいたことを紹介した。その後「歩けなくてもできることを探す」発想へ転換し、コロナ禍では倒産危機に直面したが、関西の起業家から支援を受け、ビジネスが展開できている。

障害者に関する歴史について、飛鳥時代末期の大宝律令では障害者への制度的配慮が存在し、江戸時代には障害のある将軍を支える仕組みがあった。一方、明治維新後、富国強兵のもと障害のある人が社会の中心から遠ざけられたが、戦後の法整備によって再び社会参加が進んだ。近年は障害者差別解消法の改正により、民間企業にも合理的配慮の提供が義務化され、対応の質が問われている。

大阪はバリアフリーの先進地であり、点字ブロックや地下鉄エレベーター整備が全国・世界へ広がった。日本の交通インフラは世界的に見ても高水準だが、「心のバリア」が依然として課題であり、無関心や過剰配慮を避ける姿勢が求められる。

企業の取り組みとしては、後付けではなく企画段階からバリアを作らない設計が重要。できること・できないことを正直に示す情報開示も有効で、ミスマッチを防げる。親切の先回りが固定観念の押し付けになる例として、飲食店の店員が車いすユーザーを見たら、何も聞かずに椅子を動かす場面で、車いすのままか、店の椅子に移るかを確認し、対応時には選択肢を提示し、固定観念を押し付けないことが大切だと述べた。

障害者市場は国内で約1165万人、世界では16億人規模に及び、高齢者ニーズも重なる巨大市場である。障害者雇用は増加し、障害者は「顧客」であり「戦力」となる存在へ変化している。「CSR」(企業が社会のために行う善意の取り組み)ではなく、会社の成長につながる「事業」として取り組む視点が欠かせないと述べた。