第219回 10月3日
新関西国際空港社長兼CEO
安藤 圭一 氏
「関西国際空港、大阪国際空港の将来ビジョン」
9月4日に関西空港は開港20周年、伊丹は1月に開港75周年を迎えた。関空、伊丹が上昇トレンドに乗っている時に記念式典ができてよかった。関空は2本目の滑走路建設への反対の声も少なくなかったが、2期島を造ったことが、LCCやフェデックスの参入につながり今の成長を支えている。開港後、阪神大震災、リーマンショック、東日本大震災と、アゲンストが続いた中で、関空に関わった多くの人に感謝したい。
アベノミクスの効果で行き過ぎた円高が修正され、海外からのインバウンドも増えている、アジアの中間所得層が拡大し、2030年には32億人に増えるという流れになっており、圧倒的にアジアの旅客輸送量が拡大する。
こうした中で、LCCは、一気に拡大するとみている。羽田や成田空港は発着枠74万回を82万回に増やそうとしているが、新たな滑走路を作るには時間がかかる。首都圏だけでは吸収できないので関空を含めた地方空港の強化も図るべきだ。
関空は日本一、着陸料が高い。エアラインのオフィスの賃料も飲食店の賃料も一番高い。「金かかっているから料金が高いのは当たり前」ではだめだ。下げることによって航空ネットワークを拡大させることがとても大事だ。航空旅客を拡大し、非空港部門の商業系を拡大することで空港が魅力ある施設でないといけない。魅力ある空港づくりをすれば、たくさんの人に空港で楽しんでもらえる。
第1ターミナルビルもトイレやベビールームなどの改修を進めるなど商業施設のイノベーションを進めている。来年3月末には、6つの免税店がオープンする。ユニクロは、日本の空港では最大規模の店を関空に出す。商業部門の収益を上げる、それを原資にしてさらに着陸料を下げるという形で好循環に変えないといけない。
EBITDAは14年度に605億円を目指している。上期が終わったが今のところ計画通りだ。コンセッションは、毎年490億、45年間で2兆1千億円を払ってもらうということだが、海外の投資家はウエルカムという反応が多い。関空・伊丹の価値は高いという感じがしている。インフラ管理に膨大な金がかかるというのは先進国共通の問題だが、コンセッションで、資金も人材ノウハウも民間にバトンタッチしてさらに成長を加速させる。公共インフラのビジネスモデルを作れば他の地方空港もコンセッションをやろうとしているから、うまく続いていく。
国内の重要な資産であるインフラに資金還流することも大事だ。国内は為替リスクもない、環境リスクもない。長期金利に極めてフィットしている。生保の資金、年金資金も回していく必要がある。そうした観点で大きく資本市場を変えることが大事ではないか。コンセッションによって民間の戦略的な投資をスピーディにできる体制をとっていく。
将来、LCCの利用客が増えると建設中の第3ターミナルだけでは足りないので第4ターミナルの建設を視野に入れている。第1ターミナルで電車を降りた乗客が歩いて移動できるよう1期島と2期島を結ぶ橋の整備も必要だと考えている。これから大変な時期を迎えるが関空の価値を大きく上げる意味でもコンセッションにしっかり取り組んでいきたい。(海老原 史)
講師略歴(講演時)=1951年岐阜県出身。76年3月東京大学経済学部卒業。同年4月住友銀行(現三井住友銀行)入行。2002年、三井住友銀行戦略金融統括部長。03年、同執行役員戦略金融統括部長。05年、執行役員企業金融部門副責任役員、06年、同常務執行役員大阪本店営業本部長、09年、同取締役兼専務執行役員、企業審査部・融資管理部担当役員。10年4月から同行代表取締役兼副頭取執行役員を歴任し、12年4月新関西国際空港㈱代表取締役社長に就任。同年7月から現職。