循環型経済が得意な和歌山の時代が来た

※講演の模様をYoutubeにアップしました※

第295回 2023年7月12日
和歌山県知事 岸本 周平きしもと しゅうへい 氏
「和歌山が最高!だと子どもたちが思う未来を!」

 私は衆議院議員を5期務め、3年間の与党時代以外はずっと野党でやってきた。しかし、昨年は二階先生をはじめとする自民党の皆さんとタッグを組んで知事選に出させていただいた。政治の世界は非常に面白い。昨日の敵は今日の友。本当にそういうことだ。
 私は財務省では主計局など予算関係の部署が長かった。知事になってすぐ和歌山県が借金まみれだとわかり、「財政危機警報」を出した。財政調整基金は今年度209億円あるが、このままだと2年後にはゼロになる。県債残高も増えていき、実質的な県の公債費負担も足元は200億円強だが、10年後は倍になると見込まれる。一方で、歳出カットと増税だけで財政再建はできないので、するつもりはない。賢いやりくりをしながらやっていきたいと思っている。
 そのためにも有識者や県内外の多様な主体から助言や提言をもらう「和歌山未来創造プラットフォーム」を作った。まずアドバイザリーボードには吉本興業の大崎洋・前会長、デザイナーのコシノジュンコさん、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長ら私の友人のみなさんにお願いし、直接助言をいただく。
 これとは別に全国で活躍する企業経営者や文化人をチームリーダーにして「観光」「DX」「地方創生」などのワーキングチームを設け、県庁職員が参加している。このほど「不登校問題」のワーキングチームも作った。


教育を見直し、好きなことに出会える応援をしたい
 和歌山県は教育を根底から見直した方がいいと考えている。日本の学校教育はあらかじめ答えがある問いを出してそれを解く教育。そういう能力に秀でた偏差値秀才がこの国を悪くしたと思っている。これからは工業、商業、スポーツ、芸術、ITなど専門学科を増やし、子どもたちが自分の好きなことに出会える応援をしたい。
 もう一つ。統廃合された山間部の校舎を活用して外国人留学生を呼びたい。全寮制で1学年50人。留学生と日本人が半々で、英語と日本語で授業をする。授業料と寮費を無料にして土木や建築などの日本の資格を取らせて、和歌山の中小企業に就職してもらう。来年度はまず工業科を充実させて5人ぐらいをベトナムの地方から呼べないか研究している。
 タウンミーティングもすでに24カ所で実施した。住民10人ほどに集まってもらい、話を聞く。IターンやUターンでまちづくりをやっている若い人たちは前向きで、Iターンの人とUターンの人が仲がいいところは成功している。年間1000人ほど移住者があるが、2000人、3000人に増やしていきたい。
 昼休みには若手職員らを8人ぐらいずつ集めて、おにぎりや弁当を持ち寄ってしゃべる「おにぎりミーティング」を開いている。話題は業務改善や職場環境の改善など。県庁では出張旅費が発生しない和歌山市内への外出ですら帳簿に書いて課長のハンコをもらっていた。それを7月1日からやめた。明らかに不合理なことをやめるのに半年かかった。そういうことが山ほどある。私の今の仕事は職場環境を改善することと思っている。DXも和歌山はずいぶん遅れているのでこれからぜひやっていきたい。
 私の公約は第1次産業と観光産業の振興。あとは業務量の削減を指示していて、来年度はできれば予算比で15%カットしたのを持ってきてほしいと言っている。県庁でも民間でも最大の経営課題は人手不足。昔は憧れの職場だった県庁ですら新卒が来ない。特に技術職は厳しく、これからは中途採用を増やしたい。新卒採用もちょっとした知能テストと面接だけにしてペーパーテストはやめようと言っている。庁内に反対は多いが、そこを変えないと人がとれない。
 経済成長至上主義の20世紀は、和歌山は平均所得も低く評価が低かった。しかし脱酸素が重視される21世紀は、自然に恵まれ循環型経済が得意な和歌山の時代が来たと思う。県土の8割が山林の和歌山では植林してカーボンクレジットを活用することでお金に変える道ができた。企業誘致も脱炭素の産業を中心に進めている。ENEOS(エネオス)は和歌山製油所(和歌山県有田市)での石油精製を停止し、日本最大の再生航空燃料(SAF)の生産拠点に転換する。その次は二酸化炭素と水素を合成して製造する合成燃料。自動車でも使われる時代が来ると思うので、エネオスに和歌山で生産してほしいとお願いしている。
 観光が和歌山の一つのポイントになると思う。和歌山が持っている3つのSつまり、Spirituality(高野・熊野に代表される精神性、霊性)、Sustainability(和歌山の自然環境、精神文化)、Serenity(和歌山の静謐さ)が売り物だ。海外でも観光のキーワードはこの3つのSといわれる。だが、和歌山には1泊100万円するような高級ホテルがない。今秋にタイを訪問する際に、ホテル関連の財閥に上質なサービスを提供するホテルの進出を依頼する予定だ。単価を倍にして高所得層を誘致して利益を出すビジネスモデルも有効ではないか。熊野三山や高野山などが世界遺産に登録されて来年で20周年を迎える。「聖地リゾート」を一つのブランドにしたいと思っている。
 大阪・関西万博での和歌山の出展テーマは「和歌山百景 霊性の大地」。コンセプトは上質の詰まった和歌山。トーテムを立てて映像を映すほか、ステージでは和歌山のお祭りや歴史的なものを披露し、カウンターバーでは和歌山のフルーツも提供したい。
 私が掲げるキャッチフレーズは「和歌山が最高!だと 子どもたちが思う未来を!」。和歌山にはいい企業がたくさんあり、物価も安く家も持ちやすい。大都会と違う良さを親が理解して明るく楽しく笑顔で暮らせれば、子どもたちも和歌山を最高だと思ってくれるのではないか。そこを目指してやっていく。(宮内 禎一)

会場の参加者と次のような質疑応答が行われた。
Q:串本町に民間がスペースポートを設置しているが、県としてどのように活用し将来につなげていくのか?
A:宇宙関連企業のスペースワンが串本町に発射場を設け、小型ロケットで小型の衛星を打ち上げる計画だ。年内に初号機を打ち上がる予定で、うまくいけば年間20回発射できる。今はロケットを関東で組み立てているが、軌道に乗れば地元に組み立て工場ができ、夢みたいな話だが串本周辺にロケット産業の集積地ができる可能性もある。県は最大限援助する。県立串本古座高校に来年から宇宙探求コースをつくり、全国公募する。

Q:交通アクセスについてのお考えは?
A:民営化した南紀白浜空港はコロナ禍でも利用者が増え続けている。日本航空が1日3便運航しており、4月には4便にする実験もしてもらった。格安航空会社(LCC)にも来てもらいたい。現在は滑走路が2000メートルしかなく、長期的には2500メートルを目指したいと考えている。そのためには、南紀白浜インターチェンジの周辺を再開発して公共施設の移転も含めた大きな夢を描いてはどうかと個人的には考えている。そうすれば和歌山の動線がものすごく変わるだろう。串本への高速道路も2年後にも開通する。

Q:カジノを含む統合型リゾート(IR)は推進するのか。
A:国としては法律上3つ造ろうということでスタートしたので、どこかで再応募があるかもしれない。そのときは状況を見ながら考えていきたい。誘致案は和歌山県議会でいったん否決されたが、まったく否定する必要はないし、一方でコロナ後の経済情勢をどのように考えていくのかもある。大阪を見守りたいのが正直なところだ。中国の法律が厳しくなって富裕層は海外のカジノになかなか来れなくなっている。日本のカジノ規制も厳しく投資回収にはかなり時間がかかる。このビジネスはものすごくリスクが高い。そういうことを勘案して県民に決めてもらおうと思う。

岸本 周平(きしもと・しゅうへい)氏
1956年7月、和歌山県生まれ。1980年に東京大学法学部卒業後、大蔵省(現:財務省)入省。内閣総理大臣秘書官付、大蔵省主計局主査、米プリンストン大学客員講師、財務省理財局国庫課長などを歴任し、2004年に財務省を退官。トヨタ自動車株式会社渉外部長、内閣府政策参与兼務を経て、2009年に衆議院選挙に出馬し当選。以降、連続5期務める。2012年、経済産業大臣政務官、内閣府大臣政務官を務め、2022年に衆議院議員を辞職し、同年12月、和歌山県知事に就任。趣味は映画鑑賞だが、最近は、専ら自宅で韓国ドラマを鑑賞。また、学生時代から柔道に励み、三段を取得している。座右の銘は、「天は自ら助くる者を助く」。「現場主義、草の根主義」「多様性の尊重」「前例に囚われない」の信条のもと、何より県民の皆様の声をよくお聞きしながら県政の運営にあたり、県民が、ふるさと和歌山に誇りを持ち、明るく楽しく暮らしていける和歌山をつくりあげていく。