「連携」をキーワードに時代を切り拓く



講演の模様をYoutubeにアップしました。

第280回 2021年11月22日
兵庫県知事 斎藤 元彦 さいとう もとひこ
「『躍動する兵庫』へ」

 前知事時代の県政から引き継ぐべきところは引き継ぎつつ、新型コロナウイルス感染症が収束した後の新しい社会に向け、これからの県政を動かしていきたい。目指す姿は「躍動する兵庫」。チャレンジが大切だ。のびやかな試行錯誤を重ねながら、時代を切り拓いていきたいという思いでいる。
 基本姿勢として三つ挙げている。一つは開放性を高めること。「連携」をキーワードに、民間や他府県との関係性を深め、よりオープンな県政をしていきたい。二つ目は、どこに住んでいても、幸せに暮らし、働き続けられる県域づくり。三つ目が県民との対話に基づくボトムアップ型の県政だ。
 一方で、直近の最大の課題はコロナ対応だった。就任した8月1日は第5波のまっただ中。日曜だったが、初日から幹部を集めた。その後も会議を重ね、保健所の機能強化や病床の拡充、自宅療養者向け宿泊療養施設を増やすといった対策パッケージをまとめた。


 今は新規感染者が減少し、社会経済活動の再開も重要だ。特に観光業や飲食店に対する需要喚起を早期に実施すべく、10月から県内旅行の宿泊代金を支援するキャンペーンを始めた。この効果で、ずいぶん観光が回り始めている。
 就任後ずっとコロナ対応に追われてきたが、ようやく最近、兵庫県の今後の姿について、落ち着いて議論できるようになってきた。
 私は、知事になる前に3年間、大阪府の財政課長を務めた。その間、大阪で大プロジェクトが動き始めたことを目の当たりにしてきた。2025年には大阪・関西万博が開催される。統合型リゾート(IR)も国の整備法ができ、万博からIRへの流れが生まれている。リニア新幹線や北陸新幹線も進んでいる。人・モノ・投資の大きな流れが、これから大阪に集中する。兵庫県は強みを生かし、その流れに乗ることが大切だ。
 万博やIRでは、国内外から多くの人々が集まる。そこをゲートウェイにして、人を呼び込む戦略が重要だ。県が持つ伝統文化や農林水産業、さらには阪神・淡路大震災からの創造的復興といったことを発信していく。これを「フィールドパビリオン」と位置づけ、県内各地で開催するのが私のイメージだ。
 農業や震災復興など様々な分野でいろんな人が日々、取り組んでいる。例えば農業では、おいしい作物を作ることが、食の安全や食文化につながり、健康長寿や飢餓社会の克服と関わる。日常の課題解決が、世界共通の社会課題の解決策につながっているのではないか。その現場そのものをパビリオンとして発信したい。そこに来て、体験してもらい、議論する。それを県内各地でやってみたい。
 実現に向けては大阪との連携が不可欠だ。関西の中で、兵庫と大阪の人口や産業が大きい。それぞれの特性を活かししっかりと連携していくことが、これからの関西全体を盛り上げていくために大事な視点となる。
 最後に、これからの県政を推進する柱としては、▽播磨灘・大阪湾ベイエリアの活性化▽近隣府県と連携した新たな観光戦略▽未来を創る人づくり▽スタートアップ(新興企業)支援――などがある。脱炭素では、神戸・姫路を中心に水素社会構築の拠点を作ることも考えている。
 私は11月に44歳になった。全国の知事で2番目に若い。その若さを強みにして、失敗を恐れずに挑戦し、わくわくする、「躍動する兵庫」を創っていきたい。(指尾 喜伸)

ゲスト略歴(講演時)=1977年生まれ、兵庫県神戸市須磨区出身。2002年東京大学経済学部卒、総務省に入省。省内勤務をはじめ、新潟県佐渡市、福島県飯舘村、宮城県、大阪府などの勤務を経て、2021年8月、第53代兵庫県知事に就任。