第266回 2019年6月7日
関西経済同友会代表幹事・りそな銀行副会長
池田 博之氏
「大阪・関西のイベントがこれからの時代を変える」
関西経済同友会の代表幹事は2年目になる。2018年11月、パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で2回目の投票の結果、関西・大阪万博が決定した。その瞬間の飛び跳ねた写真が残っているが、このときは本当にうれしかった。
ちょっとかっこいいことを言うと、国際選挙の現場は、過去と現在と未来の国際政治、国際外交そのものだと思った。アフリカでは「この学校は日本の財団がつくった」などと必ず言われる。「飢えたときに中国人は魚をくれる。日本人は魚の釣り方を教えてくれる」とも言われる。日本はまだまだすてたもんじゃないと思う。ある国の大使と昼食を食べながら話していると「1回目はアゼルバイジャンに入れるけど、2回目はちゃんと大阪に入れるから」と言われた。現在の国際情勢や外交の世界を垣間見た気がした。
全国経済同友会セミナーでは第一分科会に議長として登壇し、ディスカッションをした。その中で「生き残るためには徹底して速く、どんどんやっていかないと間に合わない」という話が印象的だった。
大阪・関西で予定されている大きなイベントは、2019年がG20とラグビーワールドカップ。20年には東京五輪・パラリンピック、21年がワールドマスターズゲームズ、さらに25年に大阪・関西万博と続く。まずG20大阪サミットをきちんとやり遂げることが「安全なまち」のPRになる。ワールドカップの経済効果は1500億円とも言われ、ラグビーファンの支出はサッカーファンよりも多いという。20年の東京五輪では関西にも観光客が来られるだろう。ワールドマスターズゲームズは関西を中心に日本人3万人、海外からは5万人が来る。
カジノやホテル、国際会議場などを備えたIR(統合型リゾート)は2024年の開業を目指す。大阪・関西万博の前に開業することで最大の相乗効果を生むはずだ。25年の万博は大きな意味を持っている。ゴールが決まったことで、より速いスピードで動き出すことが必要となった。その先の2030年、2040年をにらんで何をやるかをしっかり考えたい。
どんな万博にするのかは大きな課題。1970年の国威発揚型ではなく課題解決型の万博にしようとワーキンググループで検討が始まっている。ただ、楽しくて驚きのあるものにしないと集客は難しい。ドラえもん風に言うと、どこでもドアの実現は難しいが、タケコプターはすでにドローンタクシーとして実現しつつある。今できることをきちんとやっていかないと技術の変化のスピードは速い。
訪日外国人観光客(インバウンド)を増やすことは大切だ。近年、関東と関西を回るゴールデンルートは伸び悩み、京都、奈良、大阪を回る関西周遊型が増えている。
大阪でベンチャー企業が起業しやすく、人が集まるようにするにはどうすればいいかを考えたい。災害に強いまちづくりも進めたい。災害時にインバウンドへの情報提供が不十分だったという反省も踏まえて考えたい。人に来てもらうために楽しくわくわくするようなものを考えたい。大阪の発展にどう貢献できるか、今できることを考えながらどんどん実践していきたい。(志方 一雄)
ゲスト略歴(講演時)=1960年10月、福岡県北九州市生まれ。横浜国立大学卒業後、大和銀行八重洲口支店に入行。りそな銀行常務執行役員、近畿大阪銀行代表取締役社長、りそな銀行代表取締役副社長などを経て現職。社業の大半は関西での勤務。関西経済同友会では2013年に常任幹事、2016年「雇用の未来委員会」委員長、2017年「企業経営委員会」委員長。2018年5月に代表幹事に就任した。
銀行員生活の中で習得した「現場目線」を大切にし、関西経済同友会でも、より実践実装に重きを置いた活動を模索。併せて、会員増強にも力を注いでいる。
趣味はアウトドアと読書。今でもまとまった休暇がとれれば、家族との山登りで鋭気を養う。また、折にふれ自身の所有している„山小屋〝に部下や友人を招き、自ら手料理も振舞う。
仕事で大切にしていることは「ABCDE」。「当たり前のことを、バカにせず、ちゃんとやる。できれば、笑顔で」。