平和な世へ「心の和やかさ」を 戦争経験、命の大切さ訴え-千玄室さん講演

第292回 2023年4月28日
裏千家大宗匠
千 玄室せん げんしつ 氏
「平和とは


 茶道裏千家前家元で大宗匠の千玄室さんが、4月28日に大阪市内で開いた関西プレスクラブの定例会で「平和とは」をテーマに講演した。同月19日に満100歳を迎えた千さんは、太平洋戦争で海軍の特攻隊員となった経験から命の大切さを訴え、「大事なのは人間の心の和やかさ。平和という言葉を使わなくてもいい世の中にしていかなくてはならない。穏やかな世の中をつくらなくてはならない」と語った。
 千さんは戦時中、海軍でともに訓練した仲間に茶を振る舞ったエピソードを紹介。「(出撃前の)最後に私のたてたお茶を飲み、『お母さーん』と叫びながら、みんな出て行った」と振り返り、今なおその声が耳に残っているという。当時、「みんなは家族が助かってくれたら、自分が死ぬのは当然だと考えていた」とも強調した。
 戦争を経験して「初めて命の大事さを思った」と千さん。「平和と口々に叫んでも平和はやって来ない。人の欲望がなくならない限り、戦争は収まらない」と指摘し、千利休が唱えた「和敬清寂」の教えを念頭に、お互いが心を和らげて敬い合い、清らかな心でいることが平和につながるとの認識を示した。
 ロシアによるウクライナ侵攻の終結が見えない中、「ゼレンスキーさんがプーチンさんに会い、お互いに話し合いをすることが大事だと思う」とも語った。
(上原 栄二)